もう一人の世界最高のDF『リリアン・テュラム』 - サッカー動画王　超絶テクニック解説

リリアン・テュラム

　今日のサッカー動画王がお送りするのは、更に引き続きDF特集！。昨日お送りしたファビオ・カンナバーロの盟友、もう一人の世界最高級のDF『リリアン・テュラム』だ。

フランス代表の中心として長い間活躍し、先日フランス歴代最高のキャップ数を記録。フランスでは珍しく、カリブ海の出身であり、カリブの人達にとっては、カリブでも世界に通用するという良いモデルになっていると思われる。

テュラムは元々攻撃の選手だったのだが、フランスのASモナコ時代に、あのアーセン・ヴェンゲル監督にDFにコンバートされ才能が開花。強靭かつしなやかな身体能力と戦術眼の高さで、瞬く間に世界のトップシーンに上り詰めた。世界的に有名になったのは、イタリアのパルマ時代で、カンナバーロ、ブッフォンとセリエ最強すなわち世界最強とも言われた守備トリオを結成。幾多の超絶守備を見せた。その後、テュラムはブッフォンと共にユヴェントスに移籍、やがてカンナバーロも移籍してきたため、ユヴェントスで再度このスーパートリオが結成されることとなった。残念ながらユヴェントスが八百長騒動でドタバタになってしまい、自信はバルセロナへ、カンナバーロはレアルマドリーへ移籍。世界に名だたるライバルチーム同士に分かれることになった。

代表では、1998年のフランスワールドカップと2000年のEUROで優勝。特にフランスワールドカップでは本職ではない右サイドバックを見事に勤め上げ、準決勝のクロアチア戦では単独突破からの驚異的なゴールを記録、自国を救った。

テュラムの超絶テクニックは、実は身体能力ではなく、頭脳的な読みの力にある。かなりのインテリとして知られており、戦術眼も優れているため、戦術大国であるイタリアの中でも屈指の読みの力を持つ選手として認識されている。テュラムのプレーを見ていると、圧倒的な身体能力を生かして無理矢理奪うプレーは少なく、相手のプレーを見透かして予めより良いポジショニングを取ったり、心理面で相手より優位に立って自らのペースに引込む様な形が多い。日本で言えば、中澤ではなく宮本タイプと言えるだろう。
しかし、だからといってその他の能力が低いわけではなく、当然、カリブならではのしなやかな肉体を生かしたフィジカルコンタクトにも優れた点を見せる。欧州やアフリカのパワーとは異なり、カリブというのはどこかゴムの様な不思議な体質を持っている様で、テュラムは細身に見えるのだが、相手を抑え吸収してしまうかの様なフィジカルの強さと柔らかさを同居させている。

また、代表では右サイドを務めていることからわかる様に、攻撃面でも高いセンスを持っており（元々攻撃選手）、攻撃参加のタイミングと安定したボールさばきで、チームのアクセントになることもしばしばある。本職はセンターバックであるのに、ブラジルのカフーと並んで世界トップレベルの右サイドバックとしても認識されている程、非常にオールマイティーな能力を持っている。センターとサイドをここまで高いレベルでこなせるのは、パオロ・マルディーニとテュラムくらいだろう。攻撃面のセンスがあることも、守備のセンスの良さに一役買っているのかもしれない。

あのカンナバーロが『別の惑星から来た選手』と言う程の高い能力と安定度を持っており、カンナバーロ、マルディーニ、ネスタの3大イタリアDFと並んで世界トップのディフェンスプレーヤーとして認知されている。今回のドイツワールドカップでも、ジダンと共に予選途中からチームに復帰し、見事決勝まで導く原動力となった。決勝ではテュラムとカンナバーロという世界を代表するDF同士が、互いの攻撃陣を見事に押さえ込んだ内容だったと言えるだろう。

カリブの英雄。イタリア人よりイタリアらしいDFをするフランス人選手。この知的で強靭な最強DFのプレーを是非楽しんで欲しい。